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Ryotaro Eguchi : ヱ本
¥3,800
Ryotaro Eguchi : ヱ本 Published by Bong Sadhu 音楽と視覚芸術は、生まれたその時からずっと共にあった。根拠はないが、そうとしか思えない。 数万年前、あるいはもっと古代の芸術の多くは、暗い洞窟の中に壁画として描かれた。洞窟内部の音の反響は、ひとつの吐息でさえ、立体的な音響芸術に変えてしまう。古代の芸術家たちは、その異質な音環境の中で美的技能を練磨した。反対に、松明の不規則な光が壁面に映す、異形に変わり続ける自分自身の影を、知覚遊戯的に眺めながら生み出される、打撃音と人声のみで構成された音楽の萌芽も、そこに存在していたに違いない。おそらく、音楽と視覚芸術が生まれたとき、それぞれは分離した概念ではなかった。互いは溶け合う、同時の時空そのものだった。だが、いつの間にかそれらは互いの優位性を競い、相互に補完し合うだけの関係にまで変化してしまった。 ところが、一九六〇年代半ばのアメリカで変革が起こった。意識変容とアナキズムを結びつけ、権威的に引かれた様々な境界線を融解させようと試みていた若者たちは、音楽と視覚芸術を概念ごと溶け合わせ、その冷え切っていた関係性を終わらせた。それがリキッドライト文化である。暗闇の中で、反復を主体としたバンド演奏に、着色されたゲルの照光を投射し、音と光は同時的に混ざり合う。それは即興という行為を媒介として、洞窟の中にあった対称性を取り戻す儀式であった。 江口暸太朗は暗闇の中、音響に耳を澄まし、映像を即興的に変容させ続ける。音と光が同時の時空に溶け合うとき、その場に洞窟が立ち上がる。これらの写真はその実験の痕跡である。 彼は洞窟の中に生きている。 text by Tsutomu Sonoda (maya ongaku)
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JAPANESE WOW FACTOR - Send Points
¥4,950
JAPANESE WOW FACTOR Redefining Dots, Lines, and Planes in Design 本書は、日本のデザインに特有の視覚的インパクトを、「点・線・面」という造形の基礎単位から再定義する理論的考察書である。 近代以降のデザイン理論において、点・線・面は視覚構成の最小要素として位置づけられてきた。しかし本書は、それらを単なる形式要素としてではなく、日本的造形思考を生成する“構造的原理”として捉え直す。ここで焦点となるのは、装飾性や様式ではなく、構成そのものがいかに意味作用を生み出しているかという点である。 日本のグラフィック、プロダクト、建築、空間設計などの事例を横断的に検証しながら、以下の観点が整理される: • 点の反復と間(ま)の関係性 • 線の方向性が生む緊張とリズム • 面の分割と余白が構築する空間秩序 • 要素の削減による情報密度の再編成 本書が提示するのは、「日本らしさ」という文化的記号ではない。むしろ、視覚要素の最小単位に立ち返ることで、デザインがいかに知覚構造を編成し、驚き(WOW)を生成するかというプロセスの分析である。 したがって本書は作品集というよりも、構成論・視覚言語論に近い。 視覚的感性の背後にあるロジックを抽出し、再利用可能な設計原理として提示する点に理論的意義がある。 日本のデザインを文化論ではなく、造形原理の観点から理解したい読者、また構成的思考を深化させたい実務デザイナーや研究者にとって、有効なリファレンスとなる一冊である。 香港を拠点とするデザイン専門出版社 SendPoints(sendpoints) アジア圏の視覚文化・グラフィックデザイン・建築・タイポグラフィに焦点を当てたビジュアル主導型の出版を数多く手がけてきました。 SendPointsの特徴は、単なる作品集ではなく、テーマや理論軸を明確に設定し、国際的な視点から編集を行う点にあります。東アジアのデザインをグローバルな文脈で再整理する試みは、近年のアジアデザイン出版の潮流を象徴するものといえます。
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