カレル・マルテンスは、オランダのグラフィックデザイナー、教育者、アーティスト。
インディペンデント精神あふれる実験的な作品は、グラフィックや印刷の根源的な可能性を再発見することができる。本書は、カレル・マルテンスが1962年から1963年にかけて、恋人ルースに宛てて送った46通の手紙の封筒を収めた一冊。
すべての封筒は、印刷インクとスプーンという最小限の手段を用い、彼自身の手で一点一点制作されたもの。軍役中、プリンス・ヘンドリック兵舎内の厚生部隊の製図室に配属されていたマルテンスは、その限られた環境の中で、密やかな愛情と創造性を封筒というかたちに託した。軍務の傍ら、「軍務の話は口外するな、敵が聞いている」といったプロパガンダ・ポスターをデザインする任務も担っていた彼の、もうひとつの顔がここにある。
本書は、公共と私的、制約と自由、美と感情の交差点に立ち現れる、グラフィックデザインの原点とも呼べる記録である。ブックデザインもマルテスによるもの。
published by Roma Publications